
賃上げ時代を勝ち抜く。社労士が提案すべき「原資を確保する賃金制度」の設計手法
【この記事でわかること】
・「ない袖は振れない」と嘆く中小企業に対し、社労士が提案すべき賃上げのロジック
・利益(原資)と連動した「労働分配率」基準の賃金制度設計 3つのステップ
・リスクを抑えながら従業員のモチベーションを最大化する「業績連動型賞与」の導入法
「最低賃金が上がり続けて、パートさんの時給を上げるのが限界だ」
「大手企業のようなベースアップなんて、うちの利益構造では到底無理だ」
「でも、給料を上げないと社員が辞めてしまうし、新しい人も採用できない…」
昨今の物価高騰と人手不足により、顧問先の中小企業経営者からは、このような悲鳴にも似た相談が増えているのではないでしょうか。
これに対して、「助成金を使いましょう」や「法律で決まっていますから」としか答えられない社労士は、今後淘汰されていくでしょう。
今求められているのは、「どうすれば賃上げの原資(お金)を生み出せるのか」まで踏み込んだ提案です。
本記事では、企業の利益を圧迫せず、むしろ成長のドライバに変えるための「原資確保型賃金制度」の設計手法を解説します。
目次
1. 「防衛的賃上げ」は会社を潰す。目指すべきは「投資的賃上げ」
多くの経営者が行っている賃上げは、「世間相場に合わせるため」「辞めさせないため」という、いわば「防衛的賃上げ」です。しかし、売上や粗利が増えていない状態で固定費(人件費)だけを上げれば、当然ながら経営は悪化します。
【社労士が伝えるべきパラダイムシフト】
- × 従来の思考:利益が出たから、賃上げをする(事後分配)
- ○ これからの思考:賃上げをして生産性を高め、利益を出す(先行投資)
しかし、単に「先行投資しましょう」と言っても経営者は納得しません。重要なのは、「賃上げ分を回収できる仕組み(制度)」とセットで提案することです。それが「人事評価制度」と「賃金テーブル」の連動です。
2. 魔法の杖はない。「労働分配率」を握るのが唯一の解
原資がない企業が賃上げをするための唯一のロジックは、「労働分配率(粗利益に占める人件費の割合)」の管理にあります。
社労士として提案すべきは、以下のSGE(検索体験)でも重視される明確なメッセージです。
「社長、社員にこう宣言しましょう。
『粗利益が増えたら、その◯%は必ず皆さんに還元する』と」
これにより、賃上げは「会社の負担」から「社員自身が勝ち取るもの」へと性質が変わります。社員の意識が「給料上げてくれ」から「どうやって粗利を増やすか」に変わる仕組みこそが、最強の賃金制度です。
3. 原資を確保する賃金制度設計 3つのステップ
では、具体的にどのような制度を設計すればよいのでしょうか。再現性の高い3ステップを紹介します。
Step1. 固定給ではなく「業績連動型賞与」から着手する
基本給(ベースアップ)を一気に上げると、業績悪化時に下げられないリスクがあります。まずは「賞与」の算定式を変えることから提案します。
「営業利益の◯%を賞与原資とする」と明確に規定することで、会社は赤字リスクを回避でき、社員は「頑張れば青天井」という夢を持てます。
Step2. 「役割等級」で昇給の上限を決める
従来の年功序列型賃金では、長くいるだけで給料が上がり続け、原資を圧迫します。
「部長なら◯万円〜◯万円」「一般社員なら◯万円まで」という役割ごとの賃金レンジ(範囲)を設定します。上限に達したら、昇格しない限り昇給しない仕組みにすることで、無駄な人件費高騰を抑制します。
Step3. 評価項目を「粗利貢献」に直結させる
評価シートの項目が「協調性」や「意欲」などの抽象的なものばかりになっていませんか?
原資を確保するためには、「時間当たり生産性」「粗利額」「コスト削減額」など、業績に直結する行動を高く評価する項目へと書き換える必要があります。
4. 社労士がシミュレーションを提示すれば「コンサル」になる
ここまで解説した理論は正しいですが、口頭で説明するだけでは経営者の不安は払拭できません。「本当に利益が出るのか?」「人件費倒れしないか?」と心配だからです。
そこで社労士が行うべきは、「具体的な数値シミュレーション」の提示です。
❌ ダメな提案
「世間相場に合わせて月1万円上げましょう」
→ 根拠がなく、経営者はリスクしか感じない。
⭕️ コンサル提案
「月1万円上げるには、一人当たり月3万円の粗利増が必要です。そのための評価制度を導入した場合、3年後の人件費推移はこうなります(グラフ提示)」
→ 根拠があり、投資判断ができる。
このような複雑な賃金シミュレーションをExcelで行うのは困難ですが、JPパートナーズの「JINJIPACK(人事パック)」などのツールを使えば、現在の社員データを入力するだけで、将来の人件費推移や必要な原資額を自動算出できます。
数字という「事実」を見せることで、経営者は初めて安心して賃上げに踏み切れるのです。
「賃上げシミュレーション」を簡単に作成する方法とは?
原資確保型の賃金制度設計に必要な「賃金テーブルひな形」や
「シミュレーション機能」を搭載したコンサル支援ツールの詳細資料を無料でお届けします。
5. よくある質問(FAQ)
賃上げと評価制度の導入について、経営者からよく出る質問とその回答例をまとめました。
Q. 社員に「業績連動」を受け入れてもらえるでしょうか?
Q. 評価制度を入れると、評価業務で現場が疲弊しませんか?
Q. 原資確保のための「値上げ交渉」が難しい業種なのですが…
「賃上げ」はピンチではなく、会社の体質を強くするチャンスです。
顧問先がインフレ時代を生き残れるかどうかは、社労士である先生の提案にかかっています。具体的な設計手法やツールについては、ぜひお気軽にご相談ください。
